FEATURE
It is so much like us. [mitti]
  • FEATURE
LaneFortyfive|レーンフォーティーファイブ
mitti_________|ミティ



陶芸用粘土、という粘土がある。文字通り陶芸用の粘土で、水を含ませ、焼くと器になる土だ。誰しもが必ず使ったことのある陶器。毎日触れるもの。それがもともとは土だったと改めて考えると、少し意外な気持ちになる。



今回は、日本ではまだ珍しい、イギリスの新しいクローズカンパニーをご紹介したい。
2016年よりロンドンを拠点にスタートした、〈LaneFortyfive〉だ。デザイナーのTan氏は、元金融アナリストで独学でファッションを学んだという異色のキャリアの持ち主。手仕事で作られていた時代のヨーロッパビンテージに着想を得て、ユニセックス・ハンドメイドをテーマとしたものづくりをしている。

そしてさらにピックアップしたいのが、いくつかのコレクションを抱えているこの〈LaneFortyfive〉のうちの一つ、〈mitti〉というコレクションだ。

特徴的なのは、洗いざらしのような粗野な印象のリネンと、ハッとするほどの美しい染色。あたたかな木のボタン。それらが醸し出す雰囲気は、どことなくヴィンテージっぽさも感じさせる。デザインはいたってシンプルで、服としての無駄がない。どんな流行にも思想にも、国にも属さず、普遍的なワークウェアのようだ。

話は戻るが この〈mitti〉は、冒頭で話したような土、つまり粘土に着想を得たコレクションラインだそうだ。
まだ誰にも触れられていない固い土を、水を含ませて捏ね、形成していく。その過程、土は身を任せ、全てをこちらに委ねている。そして火にかけられ、目的を持った物となり、しかしある日割れてしまう。途端にそれは何物でもなくなり、また、無垢な存在に変わる。そんな粘土の様子を、コンセプトとしているという。ぜひ一度、ご一読いただきたい。
mitti website

為すがままにその姿を変える土と、人。彼らもまた、「It is so much like us.」と表現しているが、これは本当に、まるで人間そのものなのかもしれない。哲学的というか人生観さえ感じ、すこし意味を考え込みたくなるようなコンセプトだ。

  • FEATURE
  • FEATURE

印象的な一節があった。

The start is the end is the start そして
The end is the start is the end
始まりは終わりで、終わりは始まりで、始まりはまた終わりだ。
始まりも終わりも、姿かたちなく、概念がない。何者でもなく、同時に、何者でもある。
それらは希望や絶望ではなく、ただ、普遍的な事実。
私たちはこの身体で生き、経験し、そして老いて死ぬんだけど、それもまた、始まりに過ぎないのかもしれない。


〈mitti〉のお洋服を見たとき、私は最初、言葉にできなかった。時代や国など何かしらの特徴もなく、ただ確かに「そこに在る」という事実だけが存在する。自分自身が本来そうであるように。

そして触れて、リネンの軽やかさに驚き、その発色の良さに心動かされる。
彼らのお洋服は染料にもこだわりがあり、ほとんどを果実や草木など自然素材を用いて染めているという。それら原材料の辿ってきた歴史や、人との関わりも、お洋服に普遍性を与えている一因かもしれない。


  • FEATURE

極端に目立つわけでなく、シンプルであり、なおかつ良質なものというのは、いちばん難しいと私は思う。そのようなお洋服を作る〈LaneFortyfive〉もやはり、イギリス本国では通常オーダーメイドで製品を提供しており、全てイギリス国内のテーラーの手によって作られているという徹底ぶりだ。〈LaneFortyfive〉は、この大量生産の時代にトレンドによって崩されることなく、歴史的なスタイルと実用性に重点を置いて、私たちと服との普遍的な関係を再構築し提案してくれている。

リネンが育つ過程で、この洋服は何物かになり、色褪せは、何かを物語るかもしれない。細部まで気持ちを行き届かせ作られているからこそ〈mitti〉のお洋服は、自分自身がなるがまま生きていくその様々なシーンで、違和感なく共に過ごせる1着なのだ。


日本ではまだ見ることのできる機会が少ない〈LaneFortyfive〉、そして〈mitti〉。エアエイジでは3月21日(木・祝)〜24日(日)の4日間限定で、イベントを行う。シャツを中心に、ジャケット、パンツなど店頭に揃い、秋冬の受注会も同時に行う予定だ。

この機会に、着て、感じてみませんか。
〈LaneFortyfive〉の素晴らしい精神のもと作られ、かっこいいとか可愛いとか、そういうことを超えた、〈mitti〉のお洋服を。



It is so much like us.
私やあなたに、とてもよく似てる




  • FEATURE
  • FEATURE
  • FEATURE


LaneFortyfive website

文:山田ルーナ






次の記事へ   前の記事へ