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SEEALL / as a culture
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FEATURE vol.27 SEEALL|シーオール


エアエイジで今季から取り扱いをはじめた SEEALL(シーオール)は、日本人デザイナー・瀬川誠人氏によるアパレルブランドだ。
スタートは2019年。まだ数年だけれど、その存在を強く意識している洋服ファンも多いのではないだろうか。

SEEALLの特徴は、そのバランス感覚にあるといえる。コレクションは、たとえば綺麗なものも、クラフト感のあるものも、リメイクも、もちろん定番だって、同時に展開される。そして、多くの人のワードローブの隙間を埋めるような、絶妙な今っぽさがありながら、しかし同時にずっとそばにあったような、親しみのある風合いを感じさせるのだ。
いい意味で、脇役。それはあるいは、ビンテージショップで見つけた掘り出し物のような。普遍的な名作のような。そんな面白さを SEEALLは もっている気がするのだが、どうだろう。

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デザイナー瀬川氏の生い立ちについて、すこし触れよう。
瀬川氏は、着物仕立屋の家系に生まれ、京友禅の絵付職人である父親をもつ。幼少期より工房で時間を過ごし、日本の伝統やその動きが常に身近にあった。彼の興味深い点は、その生い立ちをもって、10代はアンダーグラウンドの音楽やアート、映画、デザインに傾倒したというところにある。あらゆるサブカルチャーに影響を受け、大学時代にイギリスへ。その後イタリアに渡り、2015年にデザイナーとして、イタリア企業と共同で〈MAISON FLANEUR(メゾンフラネール)〉を立ち上げた。ここではクリエイティブディレクターも務め、ブランドは世界各国の主要なリテーラーに取り扱われることとなる。
 
そして、2019年。よりコンセプチュアルなものづくりを目指し、帰国。
現在の SEEALL を立ち上げるに至る。

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生産は、ものによって流動的に、世界中のあらゆる国(アルゼンチン、インド、イタリア、日本、など)でおこなわれる。
それぞれ、各国の伝統的な技術を用いているという点で共通しているが、面白いのは、SEEALLのデザインに落とし込まれた途端、それらは単なる技術の継承・再現ではなくなるということ。…こと服において、伝統的な技術をもってつくられるものは、「民族的」と表現されたり、特定のあたたかみを感じさせてしまうことが多いが、SEEALLは同じ技術を用いているのに、それがないのだ。
だからそれは、再解釈などという言葉でも表現しきれない。
伝統を、まったく新しいものに昇華させる、その切り口。SEEALLの、時代からも独立した魅力は、あるいは そういったもの作りの姿勢にある。絶え間なく更新され、しかし普遍性をあわせもつサブカルチャーのように、人の隙間を静かに埋めつづけるのが、きっと、SEEALLというブランドなのだ。


もしかすると、瀬川氏の中では 服以外のすべてが、服に繋がっているのかもしれない。
服が発展してきた背景には、音楽や絵画、映画など、あらゆる芸術がある。そして、伝統と技術。SEEALLはそれらの本質的な関係性を見つめ直しながら、服を作り、リアリティを求めつづける。

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SEEALLのコレクションは、 EDITION で分けられ、春夏や秋冬というシーズンのくくりを持たない。
時間の流れにさえ、季節の移ろいにさえ、逆らうように、SEEALLは独自の道を歩きつづけ、私たちを魅了するのだ。


いちファッションではなく、文化的なそれとして、私たちはSEEALLの服にひとつの真実性を見出す。

新しい時代の、だけど、普遍的な。

SEEALLのコレクションを見ていて、見えない何かが、胸をかすめた。



【シーオール・A.I.R.AGE ONLINE STORE はこちら】


文:山田ルーナ






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