FEATURE
リニューアル10周年を迎えて—エアエイジスタッフたちの軌跡と、これからの10年のこと。
愛知県春日井市のセレクトショップ・エアエイジ(A.I.R.AGE)が、この春リニューアル10周年を迎える。
長いようで短い、10年という一区切り。プライベートでも仕事でも、振り返れば大きな変化を感じる人は少なくないだろう。
ただ、もちろん、変わらないものも。例えば服が好きという気持ちだったり、それを人と共有する時の喜びだったり。大きな変化を思うからこそ実感できる大切なこともある。
だから、この節目に、スタッフたちの10年について話を聞いた。
10年前、何をしていたのか。今、どう変わったのか。そして、これからの10年をどう過ごしたいのか。当時から在籍していた者、新しく加わった者、それぞれの視点が交錯する。ポートレートとともに綴る、エアエイジの現在地。
エアエイジスタッフの10年前と今、そしてこれから
10年前のリニューアルに奔走していたのが、当時エアエイジバイヤーを務めていた祖父江だった。「バイイングや内装準備など全てが目まぐるしく動いていた」と、リニューアルの期待感というよりは忙しかった記憶が思い出される。
長らくエアエイジバイヤーを務めてきた祖父江だが、現在はMDとして別の業務にシフトしつつ、スタッフのバイイングを見守る立場にいる。
「当時一緒に走っていたスタッフが今もエアエイジを支えてくれているのが、何より嬉しい」。現在の現場スタッフのことを、頼もしく感じているようだ。
そんな現在の現場のスタッフたちに、短い取材を実施した。10年前何をしていた?今エアエイジで何を思う?この先の10年は?
エアエイジを訪れれば会うことができる、お馴染みの顔ぶれたち。もしかしたら、見知ったスタッフもいるかもしれない。ご自身の10年と重ねて、エアエイジ10周年をささやかに祝うような気持ちで、このアニバーサリーイヤーを共にスタートしたい。
メンズスタッフ/バイヤー 小原
10年前、エアエイジの系列店「AMULUE(アムル)」のメンズ服バイヤーとして奮闘していた小原は、当時を「学びが多く刺激的で楽しかった」と振り返る。ワーク、ミリタリー、サーフを軸にセレクトしながら、失敗も重ねつつ、日々を必死に過ごしていたようだ。
この10年で、エアエイジも、自分自身も、良い方向に変化を遂げた。「お客様が年々増え、仲間にも恵まれ、望んでいたことが形になりつつある」。そして「感謝しかない」と、お越しくださる方への想いを口にした。
この先の10年について尋ねたが、先のことを見据えてというよりは、まずは何よりこの1年を楽しむことを優先するつもりだという。「準備はしてきた。あとは、みんなと楽しみたい」と、アニバーサリーイヤーに向け気合いは十分だ。
レディーススタッフ/バイヤー 松田
10年前、リニューアルを機にエアエイジに復帰した松田。30代真っ只中、子育てのため一時は服から離れていたが「また好きな環境で働ける」とワクワクしていたそうだ。
そんな高揚感と共に歩み始めた10年だが、振り返れば「バランスに悩み続けた10年だった」と話す。子どもが成長しても子育ての悩みは尽きず、仕事とプライベートのバランスに悩んだことも。ただ、仕事があることで、自分のスイッチが切り替わることも事実。服のパワーとその素晴らしさは、身をもって感じてきた。
歳を重ねると似合わないものも増えるが、だからこそ本当にしっくりくるものが分かってくる。最近はその変化さえ楽しんでいるという松田は、「変化と変わらないもの、そのバランスを自分も楽しみながら伝えていきたい」と、今後10年へ向けての意気込みを語った。
メンズスタッフ/バイヤー 松本
10年前は保育士・幼稚園教諭だった松本。しかし、洋服への想いを捨てきれず、客として通っていたエアエイジの扉を叩いた。
今はバイヤーとして展示会へ通うようもになり、服の楽しさを再確認すると共に、その背景を伝える楽しさを実感しているという。洋服への想いは増すばかり。エアエイジのお客様と話すのが、今はとにかく楽しい。
プライベートではこの10年の間にパートナーと出会い、結婚し、子どもも誕生。「絶賛、親バカ中です」と笑う。公私共に変化の大きい10年だったからこそ、この先の10年も柔軟に波に乗っていくつもりだ。
「服は特別なものにも、日常のスイッチにもなる」。これまでの10年、何気ない日々のささやかな一瞬にも、生涯忘れないような特別なシーンにも、松本には服があった。その素晴らしさを、この先の10年はより強い実感を伴って、共有していく。
レディーススタッフ 野村
10年前からすでにエアエイジに在籍していた野村。当時はバイヤーもしていたベテランスタッフの一人だ。
この10年は野村にとって、30代の全てが詰まっていたと言えるだろう。プライベートでは妊娠・出産を経て、仕事との両立の難しさを痛感したそうだ。ただ、だからこそ、ファッションのくれる力を実感することもできた。
「時間の制約があるからこそ、限られた中でどう楽しむかを考えるようになった」。野村曰く、バイヤーをしていた頃よりも今の方が、より自由に色の組み合わせを楽しむようになったのだそうだ。その背景には、仕事と子育ての両立に悩む中でファッションのパワーに鼓舞された経験があるのかもしれない。
これから子どもが成長するにつれ、さらに自分の時間も増えるはず。「まずは自分が楽しむこと。それが、お客様にも伝わるはずだから」と、明るく笑った。
レディーススタッフ/バイヤー 松本
10年前、まだ20歳手前の松本は、歯科助手をしていた。曰く、服と旅行に給料を注ぎ込むような生活。好きなことにとことん打ち込む生活は、仕事が変わった今も意外と変わっていないのかもしれない。
変わったことと言えば、性格。人前にで出るのは苦手だと思っていたそうだが、エアエイジで働き始めた今、お客様との会話が楽しいのだそうだ。もとからそうだったのか、服が周りにある環境がそうさせているのか。いずれにしても松本は、その変化をポジティブに捉えている。
現在は販売だけでなくバイイングも担当。「自ら新しいブランドを開拓し、もっと多くの人に紹介していきたい」と意気込む。服だけでなくさまざまな経験をしてきたからこその感性が、この先のバイイングにも生きてきそうだ。
レディーススタッフ 木村
長男の子育てに奮闘しながら仕事復帰した10年前。それは木村自身、待望の復帰でもあったそうだ。「働きながら子育てする大変さを痛感したけど、服に関われる喜びの方が大きかった」と、当時を振り返る。
現在は、イベント企画やSNSの発信も担当するように。反応をダイレクトに感じながら、共感度の高いお洒落の提案を続けている。
当時1歳だった長男も、もう10代。最近はようやく自分に向き合う時間も増えてきたそうで、「もっとお洒落を楽しみたい」と目を輝かせた。以前FEATURE記事「わたしの定番」で、木村が10年以上愛用するエバゴスについて取材させてもらったことがあるが、エアエイジのセレクトを、自らもどこかお客さん目線で、心から楽しんでいるスタッフの一人だ。エアエイジのセレクトが好きな気持ちは、ずっと変わらない。
▶︎スタッフ木村とエバゴスのストーリーはこちら
レディーススタッフ/ディスプレイ 赤塚
赤塚は、今回ご紹介するエアエイジスタッフの中で最も若い。10年前はまだ学生で、服に興味もなく、もちろんエアエイジの存在も知らなかった。
エアエイジに入り、今はレディースを担当。ディスプレイも手がけている。「コーディネートを考えるのが楽しい」。10年前には考えられなかったことだが、赤塚は今、服の魅力に引き込まれつつある。
とはいえ、まだ20代折り返し。これからは服だけでなく視野を広げ、新しい視点を持ちたいそうだ。その世界の広がりが、ファッションにどう生きてくるのか。赤塚自身、10年後が楽しみだろうし、ぜひお客様にも、一緒になって楽しんでいただけたらと思う。
10年という時間は、長いようで一瞬だ。去るスタッフがいたように、去っていったお客様もいただろう。この先10年、今回ご紹介したスタッフが皆揃っているとも限らない。ただこれからの10年もきっと、別れと出会いに彩られ、そして何よりファッションのパワーに後押しされ、エアエイジはより良いセレクトショップへと前進を続けていくはずだ。
次の10年が、ここから始まる。