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これからのエアエイジと、彼らが「語ることのできる」職人たち。 / PEOPLE
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PEOPLE vol.2


しょくにん【職人】と辞書で引くと、「手先の技術を使って仕事をする人」と書いてある。たとえば、大工・左官など。自ら身につけた熟練した技術で、つまり手作業で、物を作り出すことを職業とする人たちのことだ。寿司職人や家具職人など、後ろに職人とつくものを挙げるとイメージしやすいだろうか。

フランス語では、artisan(アルチザン)。これはしばし、芸術家を意味するartist(アーティスト)と対になる言葉として用いられる。時に 技術的には優れているが芸術性に乏しい作品への批判的な意味で使われることもある言葉だが、近年では伝統工芸などの技術維持が世界的に注目されていることもあり、その存在が重要視されつつあるそうだ。芸術は本来、熟練の技術なくして語ることのできないものである。そういう意味では職人=artisanは、静かな芸術家とも言えるのかもしれない。


「職人に憧れているんです」と話すのは、エアエイジメンズバイヤーの小原氏。
エアエイジ『PEOPLE』は、そんな小原氏が企画した〝人(職人)〟と〝人(お客様)〟をつなげるためのシリーズである。ファッションという垣根を超えた ものづくりは、消費という枠に収まらず、特別な体験を提供してくれたりする。そんな体験を、お店に訪れる方にお届けしたい。


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|エアエイジバイヤー小原氏


この数年で変化した価値観と、今ここで立ち止まる意味。


第二弾となる本記事では、2022AWから新しく取り扱いが始まる2つのブランド(EGRETIQUE / artens)に触れつつ、バイヤー小原氏の思考をとおして、エアエイジというセレクトショップのオリジナリティについてお伝えできればと思う。

さて、エアエイジの2022AWを語る前に、まずはここ数年のファッションの動きについて触れなければならない。小原氏は「ものを買う理由に変化が見られる」と話す。


「この5年くらいで、買い物の仕方は大きく変わったと思います。インターネットやSNSの普及に伴い、ものを買う理由がより簡素化されました。機能や価格、トレンド性はもちろん、インフルエンサーが着ていたからという憧れや、ブランドの指名買いも増えた。良く言えば時短でスマートな買い物の仕方だけど、逆に言えば、そこには余白がないように感じます」


もちろんお店として、売上に繋がるのは良いこと。しかしセレクトショップとして、それで終わってしまっていいのだろうか。ファッションの入り口にとどまらず、さらにその先まで案内できるような体験を届けるにはどうしたら……。小原氏はバイヤーとして、この数年間葛藤を抱えていたそうだ。

そんな折に、未曾有のウイルスにより世界の状況が一変する。現地でのバイイングなどもストップし、自ずと思考の時間は増えた。

その中で小原氏の興味の対象となったのは、付き合いのあるデザイナーらが熱く話す、生地へのこだわりだった。


「当たり前ですが、デザイナーって生地にこだわって洋服をつくるんですよね。だからこそ、それについて多くを語ることができる。……コロナにより少し立ち止まることを余儀なくされ、自分自身を振り返ってみたときに、自分自身もまた、その域にまで行かなければいけないと気がつきました」


つまり、デザイナーの口から聞いた情報ではなく、自身が体験して得た情報として、お客様に伝える。ただのガイドではなく もう一歩踏み込んだところに、セレクトショップとしての理想の在り方があると、小原氏は考えた。

ここで冒頭の「職人」である。

生地の染めや織りなど、ブランドの向こう側に広がっている職人の世界にエアエイジは踏み込み、それを直接お客様に伝えることに決めた。それこそがオフラインで買い物をする意味であり、余白のある美しい体験を提供できるキーになると考えたのだ。


そうして出会ったのが、今期より取り扱いを開始する2つのブランドである。まずは〈EGRETIQUE(イグレティーク)〉についてご紹介しよう。




シンプルだからこそ職人技が生きる。EGRETIQUEのイージーパンツ


〝人(職人)〟と〝人(お客様)〟をつなげたい。そのような想いのもと、エアエイジのメンズバイヤー小原氏は気になる職人を探し始めた。

まず考えたのは、ここ愛知にもっと届けられるブランドがあるんじゃないかということだ。実際に足を運びやすいこともあり、小原氏は愛知県周辺で、職人の手による洋服を探すことにした。

そのようにして このたび取り扱いが決まったのが、愛知県津島市に工場を構える〈EGRETIQUE(イグレティーク)〉。

〈EGRETIQUE〉は、1915年創業の老舗工場『山栄毛織(やまえいけおり)』によるオリジナルブランドだ。〈白鷺(はくろ)〉というブランドを改名した まだ新しいパンツ専門ブランドであり、「EGRET(白鷺)」×「ANTIQUE(アンティーク)」を合わせた造語。職人による最高の生地を用いたイージースラックスを展開する。


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|愛知県津島市「山栄毛織」

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|愛知県津島市「山栄毛織」


職人によるブランドなので、デザインに凝っているわけではない。メインは、イージーパンツ。ただ、だからこそ、素材の素晴らしさが十分に生かされている。
小原氏はそこに惚れたのだそうだ。


「実際に工場を見せていただいて、圧巻でした。ただ、糸を織る人は年々少なくなっていて、職人の方の年齢も平均60歳を超えています。この技術はこのままだと衰退する一方だし、仕事として成り立たなくなるかもしれない……。自分は、バイイングの意味や、セレクトショップの意味を考えたときに、こういうものこそ お客さんに届けるべきだと思いました」


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|工場を訪れる小原氏


『山栄毛織』は、膨大なアーカイブを所有している。素晴らしいアーカイブ生地を用いて、この先エアエイジで別注モデルをオーダーすることもあるかもしれない。


「正直、不安はあります。指名買いにはなりにくいブランドだし、今はまだ知名度も高いわけじゃない。だけど僕たちの中で、語る準備できています。履くという負荷のかかりやすいアイテムだからこそ、その本当の良さを、体験として味わっていただけるんじゃないかな」


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|昔の記録も残っているのは老舗ならでは


余談だが〈EGRETIQUE〉の代表は、偶然エアエイジのお客さんでもあったようだ。つながりが、また次のつながりを生む。こうしてエアエイジの取り扱いに、1つの職人によるブランドが加わった。


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|「山栄毛織」の職人によるアーカイブ生地たち


オリジナルの糸で描くニットという絵。artensのアートなセーター


このたびエアエイジに加わった もう1つの職人によるブランドが、〈artens(アーテンス)〉だ。

製造方法の詳細はシークレットだが、手しごとで染色した糸を、独自の感覚で紡いでいく。
この感覚こそ職人技なのだと、小原氏は話す。


「色の濃淡だったり、この糸をこう織ったらこうなるかなというのを、彼ら職人は経験上分かっているんですよね。それがまるでアーティストのように見事で。不規則的な柄のあらわれ方というか、その揺らぎのような感じも今の気分に合っていて、ぜひ取り扱いたいと思いました」


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〈artens〉の本社は北名古屋。製造は一宮だ。デザインは東京だが、こちらにも先にご紹介した〈EGRETIQUE〉同様、ここ愛知を中心につながっていく 素敵な予感がする。


ただの「綺麗な色」という感想を超えたところに、エアエイジが伝えたい〝人(職人)〟たちがいる。小原氏にとってこれらのブランドを取り扱うことは、訪れた人に美しいサプライズを仕掛けるような感覚だ。


「足を運んで自分自身良いと思ったからこそ、伝えられることがある。やっぱり僕は伝えたいから、デジタルではなく、人伝ではなく、生の情報にこだわりました。結局、人と人なんですよね。そのつながりに価値を見出すことが、自分の魅力にもつながるし、お店の魅力にもつながるんじゃないかと思っています」


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畑を耕し、芽をあたえるように。


自ら足を運んで、長い時間をかけて取り扱いにこぎつけた 2つのブランド。しかし小原氏は、いくらものが良くても、売れるかどうかは正直分からないという。売れている、あるいはトレンド的に売れるであろうブランドに目星をつけてバイイングした方が、よほど楽なのではないだろうか。

それはもちろんそうだけど、と小原氏は笑う。


「泥臭くやっていきたいんです。自分はバイヤーなので、つくる人間ではないんですよ。でもバイヤーだから、それを選び伝えることはできる。そこに妥協したくないんです。自分だから、エアエイジだから、つなげられる人と人がいる。僕はそう思っています」


小原氏の個人的な話にはなるが、彼は畑をやっている。


「畑をやっていると循環のことばかり考えてしまいますね。ここに池つくって、あそこにあれを植えて、さあ次はどうしようって。だんだんその中でサイクルができて、シンプルで美しい世界が出来上がるんです。世界が全部そうなるといいなと思うけどそれは無理なので、まずは自分がやることで、小さな場所からきっかけをつくっていきたいと思っています」


そして ここで培った経験は、バイイングにも生きているそうだ。


「小さなきっかけでいいんです。色々なことを話したけど、自分はエアエイジのセレクトをとおして、誰かの価値観を変えたいとは思っていません。ただ、きっかけを与えたい。それが後にどういう売れ方をしたとしても、そこで生まれた小さな感動は、きっと何かしらにつながっていくと思うんです。だから、畑を耕し、芽をあたえるように……まずはここから、新しいつながりを生み出していけたらいいですね」



土を触るとき、その生命のエネルギーに感動することがある。
きっと小原氏はそれと同じようなことを、職人による生地や糸をとおして経験しているのだろう。

十分に耕されたエアエイジという畑で、小さな、美しい芽を、小原氏は育てはじめた。
彼らは水をやるように、自らの口で、職人について熱く語るだろう。

ここで何が育つか、誰の五感に届くのか、その体験の行く末に期待したい。


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|人と人とを、ここでつなげていく






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